けれど、キミはあいしてくれない | |||||
翌日、オレは仕事が入った所為で誠凛へと行くことが出来なかった。 ここ一週間は毎日通えていたのに… そのことを黒子っちに電話で伝えた。 「ごめん黒子っち!今日仕事入っちゃってそっち行けそうにないんス。本当にごめんね!!また今度なにか奢るから!」 「別に大丈夫ですよ。それに約束してる訳ではないし、仕事をちゃんと責任持ってこなす黄瀬君は尊敬してるんです。だから頑張ってきてください。」 「!!!あ、ありがとう!!!オレ、超頑張るッスよ!雑誌発売したら黒子っちの真っ先にプレゼントするから!!」 「その位自分で買えます。大体、何時も黄瀬君って奢り癖がありますよね?あんまりそんなことしてると破産しませんか。」 「大丈夫!これでも一応儲けてるから!じゃぁ、明日こそは行くから!」 「はい。じゃぁまた明日。」 ピッ、と電子音を立てて電話を切る。 (〜〜〜〜っ!!!黒子っちがオレのこと尊敬してるって…!!) 君は知ってるんだろうか。 そんな何気ない君の言葉がどれだけオレを元気にしているのか。 その君の優しさがどれだけオレの生きる理由になっているのか。 今日の仕事が入って落ち込んでいたが、黒子っちが褒めてくれたんだ。 しっかり頑張ろう。 そして雑誌が発売する前に、一番に黒子っちに見てもらうんだ。 あ、でも他の頁の奴見るのはいやだからちゃんとオレ以外の所は塗りつぶしとかなきゃ… 毎度オレの頁しか開かないようにしてるけど、万が一ってことにもしっかり備えるべきだよね! 「はーい、黄瀬君OKでーす!」 「ありがとうございました」 「お疲れ黄瀬君…って着替えるの早っ!何、何か用事あったの?」 「へへ…好きな子へ突撃デートの申し込みッスよ!」 予定より結構早めに終わったから、今から頑張れば帰り途中の黒子っちと会えるだろう。 帰りのルートは全て知ってるし、黒子っちの歩く速さを考慮してもまだ家についているとは思えない。 だから黒子っちが通るだろう場所で待ち伏せして、脅かしてやろうと思った。 (あぁ…驚いた黒子っちもきっと襲いたくなるほど可愛いんだろうな…そのあとできっと拗ねるんスよ?あぁ、早く見たいッス!) 逸る気持ちのまま小走りで黒子っちが通るだろうマジバ前の通りへと向かう。 でも、そこに映る光景は、驚いた黒子っちでも、拗ねた黒子っちでも無かった。 「…黒子っち…?」 間違えるはずの無いあの透き通ったような綺麗な瞳も、その瞳と同じ色のさらさらの髪も。 確かに黒子っちだった。 「いや、え、でも…ありえないッスよね……?」 黒子っちは、マジバの窓際の席で、火神と二人でいた。 しかも、楽しそうに微笑んでいた。 (何で、笑ってるの?) (その笑顔は、オレにしか向けない笑顔じゃなかったんスか?) (ねぇ、何で火神に頭触らせてるの?) (なんで、振り払わずに笑顔のままでいるの?) 「黒子…ち……。」 信じたくない。信じたくない…けど、目の前には現実が広がっている。 ―――黒子っちが、浮気してる…。 君の笑顔も、君の優しさの、君の私生活も、君の身体も、君の意思でさえ全部全部全部全部全部全部全部!!!!! オレだけの、ものなのに… 「…許せないッスよ…ね。」 ねぇ、 一体どっちが許せないの? そんなの、答えは明白だった。 to be continued ... |
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